のりこうのくうねるあそぶー

エグベルト・ジスモンチの世界

sawanonn2008-07-04

2008年7月4日(金)19時開演
ザ・フェニックスホールにて


大きな西洋人のチェリストがチェロを持つと、ギターのように見えるようすをちょっと思い出しました、ジスモンチ氏の持つギターを見て。
彼は2本のギターを持って現れました。
それが多弦のギターで、やはり通常のアコースティックギターよりは大きく、まるでチェロくらいの大きさに見えました。
ギターを抱え、また持ち替えて、演奏する彼――。
多彩な音の世界を表現して見せてくれました。


そういえば、パンフによると、2007年の公演ではほとんどの高名なギタリストたちが上気した面立ちで客席にいらしたそうで(笑)、それはまた別の意味でも見物であったことでしょう。
この大阪の会場では、そんなギター奏者の方もいらしたのかもしれません。
特によく身を乗り出して食い入るように目を、耳を傾け、興奮抑えきれないように身体でリズムを刻んでいた一連のひとたちが、そうなのかしら? と想像することは、また素人のワタクシにもとても面白かったです


前半はそんな、ギター曲を。休憩後、ピアノの演奏をされましたジスモンチ氏。
ギター演奏時でも思いましたが、彼はピアノを弾きつつ身体中で音楽を奏でていましたから、どうして声を出して歌わないのかしら?と、声をだしても歌う方が自然なような気もしました。
声を出して歌うと言うことはまた別なのかしら??


ま、それはさておき〜。
ピアノの演奏を聴くと、前半に行われたギターとはまったく別の世界を感じます。
それは楽器上の特徴でもあるかとは思いますが、ギターは、とにかく地上にある音を世界を、内に内に深ーく掘り下げて彩るというか、とにかく生活感というか人間らしさとは切って切れない世界の音でしたが、ピアノは高く高く舞い上がる天空の世界の音でした。


彼の演奏を聴いていると、意識が遠く高く空の上まで飛ばされ、心許なくも天空の光に包まれながら浮かんでいるような気がしました。
またとある著名な作曲家の方は、彼の公演を聴いて「『じす、じすもんち〜』と鳴きながら鳥になって上空をくるくると旋回して飛んでいってしまった…」という感想を書かれているらしいです。
まぁまさにそんな感じのするピアノ演奏で、すっかりこちらも空に舞い上がってしまいました。(笑)


聴衆の熱いアンコールに応えて再度、ピアノの前に座ろうとしたとき、フェニックスホールのカーテンがするすると引かれ、窓から大阪の夜景が星のきらめきのように現れました。
観客を背にジスモンチ氏はしばしその風景に見とれ、目を細め軽く口笛を鳴らされました。
ワタクシちょうど舞台のピアノの横の上手席でしたので、ピアノを演奏する彼のお顔が正面に望めます。
感極まって拍手するワタクシに、演奏し終わったジスモンチ氏がふと目を向けられ、お互いに笑顔を向けあったあの瞬間の幸福は、この演奏会と共に忘れられそうにありません。