のりこうのくうねるあそぶー

僕の東京日記

sawanonn2008-06-15

2008年6月14日&15日
池袋シアターグリーンにて

脚本:永井愛
演出:宇治川まさなり
主催:スタンダードソングエンタティメント
企画・制作:ブルーカバーアクターズ


チラシより
(パンフ…買ったのに見つからない…(T_T))
舞台は1971年11月東京。アパート「春風荘」。裕福な家庭で育った僕(大学生・満男)はママの元を離れ“新たなる自己形成”を目指して一人暮らしを始める。
ところがそこに暮らすアパートの管理人、売れない新劇女優、クリーニング屋のチンピラ、学生闘争のリーダーと元リーダーのおでん屋カップル、猫好きのお姉さん、公認会計士の卵、ヒッピーたち、大学の仲間、息子が気がかりな母、そして爆弾!?そんな人たちを巻き込んで起こる、ドタバタな「僕」の物語。



感想 
チラシの↑↑「巻き込んで」というよりは、いつも「いやおうなく巻き込まれてしまう」満男とそんな時代の、ドタバタな物語かと思います。

ブルジョアな家庭を恥じながら学生闘争にも入り込めない普通の一学生である満男の、生来きまじめで誠実さゆえの葛藤が、ちぐはぐな性格や言動に表れてよく悲喜劇を演じていました。
舞台背景である70年代の気風…学生闘争の終演や、ヒッピーや、アングラ舞台芸術への移行など70年代世情が色濃い背景の中にも、普遍的な屈折する若者たちの苦悩や青春が眩く描かれていて、なるほど紀伊国屋演劇賞受賞作らしいよくできた脚本で、大変おもしろかったです。


…元々2001年頃?の作品の再演…ということですが。
バブルの余韻引きずっていたただ2000年頃とも違う現代―2008年の今この舞台を観て、――生きることにもっと真摯で切実で誠実だった70年代を生きた若者たちの矜持や自負がうかがえてくるのと、それを回顧するバブル期と、現代の、あまりにも背景や世情や人種の違いに、多少の羨望を混えながらも圧倒的な違和感を覚えずにはいられません…。
でもまぁ80年代がただいま注目されるように、きっと数十年のちには2000年代を描いた秀作もあらわれ、その時代を過ごした人の心を眩くさせるのかもしれません。人はいつだって苦悩し、物語を紡いでいるものですから。
そして満男も苦悩したあの時代をこそ一番懐かしく愛おしく眩い思い出になっていることでしょうなように、今を楽しくも頑張って生きている若い方にもそう…あって欲しいものです。


そんな物語の中の「社会を変えなければ人間は変わらない」とした闘争者の論と、「自己の変革なくして社会は変わらない」としたヒッピーの論とでは、後者の方が現代的であり、結果、自己や個人にとらわれている隙に体制・権力者が大喜び・好きなように政治を動かしている…という点でも現代を見抜いています。
しかし結局――この舞台で一番怖くてエキセントリックだったのは、猫好きなお姉さんで。
そんな恐怖も現代的…なのかもしれません(苦笑)。
そして物語の大きな筋である母子の葛藤こそ、古今東西変わらない普遍的テーマでしょう。。
 



演じている役者や観客たちももちろん70年代を直に知っている人は希少ではないかと思います。終演後、
「…日本史はそこまで勉強していない」「鎧脱いだとこで終わった」等々、“歴史”として物語をとらえようとする?観客の若い女の子たちの素直な会話に苦笑せざるを得ないというか…
自分自身もなんとな〜くの空気感でしか知らないことですからまぁそういうものなのでしょうが、……何となく聴いていておかしくおもしろくなりました。
個人的には、大和和紀氏の大好きだった秀作『あい色神話』を彷彿させ、ひどく懐かしいです……。



キャスト
パンフを読む前になくしたことが悔やまれます(T_T)が☆
主役の満男と母親以外のキャストは、AチームとBチームに分かれるダブルキャストでした。Bチームの方がベテラン組になるのでしょうか?、舞台の緊迫感あって胸により迫ってきました。
個人的な好悪ですが、そのBチームの中でも「むっちゃん」を演じた方が〜、
「ラーメンよ、ラーメン…」あの声が〜、


とても印象的で忘れられません。



主役の母子も絆の強い安定した演技で大変良かったです!!!(^_^)v