のりこうのくうねるあそぶー

麦の穂をゆらす風

2006年12月13日(水)
梅田ガーデンシネマにて


監督:ケン・ローチ
脚本:ポール・ラヴァティ
プロデューサー:レベッカ・オブライエン
キャスト:キリアン・マーフィー、ポードリック・ディレーニー、リーアム・カニンガム、オーラ・フィッツジェラルド。。。




2006年カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作だそうです。
内容は、イギリスとアイルランドの紛争独立戦争)を描いた話です。が。この作品の最も素晴らしい点は、その両国間に留まらずに、現在過去おそらく未来においても繰り返されるだろう〜「諍い(戦争)」の不条理を衝いた所だと思うのです。みな、この両国間の戦いのこの映画を観て、今イラク等で起こっている問題・現状を、容易に結びつけ想像したのではないでしょうか?
かくして、「歴史は繰り返す」というか、人の愚かしくも不幸な行状(戦争の本質)を鋭く見事なまでに、見せつけてくれました。

しかし。
とは言っても…!! やはりここは英国植民地支配がもたらした(現世界でも続いてる)問題を通り越すことはできません。ええ、英国モノ大好きな私としては、大好きなだけに、その狡猾巧妙なやり口を(好悪抜きにしても)思わずにはいられなかった、です…。


最初は、1920年英国支配による圧政に、戦いを避けて逃げようとしていた主人公も、立ち向かうことを決意して、ゲリラ線に身を投じていきます。その激しい戦いの末にイギリスは停戦を申し入れ、戦いは集結するのですが…。
両国間で結ばれた条約は、アイルランド自由国”を認めながらも英連邦の自治という屈辱的立場でしかなかったのです。アイルランドの中でもこの条約に賛成するものと反対するものに分かれて対立が始まります。それはやがて、アイルランド人同士が争う内戦へとなり…。
終局は、主人公と兄とも道は分かれて、悲劇的な結末を迎えることになるのでした…。




英国はね…というか植民地主義…なのかもしれないけれど、直接的に手を下すよりは、現地の住民を別つして争わせることによって、その争いを巧妙に仕組んで支配していくやり口なのですよ。…そのこととアイルランドもまるで同じ轍を踏んだなぁ…という思いです。
遠くの植民地と違い、隣り合う国同士ですから、もっといろんな事情等あったのかもしれませんが。
翻って――。日本だって、内紛のち明治政府発足の時に、傀儡にされて植民地化されていても全く不思議じゃない状況の中を、よくも独立を貫けたなぁ…と、ホント昔の日本人は賢かったなぁ…と思わずにはいられませんでした。



まあ、そのことは差し置いて。
映画は主人公ののちのことまで触れてはきませんが〜後の、血で血を洗う北アイルランド闘争にまでまだ引きずっていきます…。
そして現在もアフリカやパレスチナイラクや世界各地で行われている「戦い」は、止むことがないのです。
(しつこく元をただせば英国や列強国の当時の都合によるものだと思うのですが…)


まーそういう〜やみくもに、悲劇的に「戦争反対!」と熱くなるだけじゃない、人間の理性に訴えるに充分な映画でした。
それは拷問に耐えるシーンや人々が死んでいく姿に、演技に、涙しますけれども!
その作品自体や作った監督ケン・ローチの手腕がよりよく冴えている…と感じます。 役者さん達もステキでしたが。
そして、アイルランドの緑一面の風景が、どんよりとした空が空気が、なんとも哀しく美しかったです。


そうそう満席でした!立ち見で映画観たの久しぶりだったなぁ〜。




あー今年も終わり…ていうことで! 今年の映画回顧が新聞紙上等でなされています〜。
この映画もベスト入りしてたりして〜観ることが出来てよかったなぁと満足したり。
そして個人的にもまたまた時間があれば、今年観た映画をふり返ってみたいなぁ…。よく観たような…?そうでもないような…?(汗)…また。