照柿
- 作者: 高村薫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/08/12
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- 作者: 高村薫
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ようやく、読めた…。という安堵の気持ちでいっぱいです、今。
単行本が、「手に重い」という理由で、ずっと読みかけのままほっておかれていましたが(内容も重いんですけどね(=_=))、単行本上下二冊になって先月すぐGET!
9月に入り少しずつ読み始めて単行本で読んだところまでは読んでいて、今日上巻の半ばから下巻の最後まで一気読みしました。
- 感想
相変わらず高村氏の本は、重いというか堅いというか解説では「強い」とありましたが。今回は特になかなか取っつけないし、読みながらも読後疲労も感じました。起こる事件そのものに、魅力というか、私の関心を引かなかったせいもあるのでしょう。マークスとか以前に書かれた話には、事件そのものや犯人にもっと仕掛けや意味や魅力を感じることができたのに…。
今回の、合田雄一郎たちが追う強盗殺害事件にしても、絡む列車人身事故(→殺人事件)にしても、最後に幼馴染みの野田達夫が起こす殺人事件にしても、それにはさほど意味はないんですよね〜、おそらく。
そして、合田雄一郎の「恋」の話だと聞いていたほどには色恋もなく、ただ現代(…といってもやはり10年前の時代の)に消耗する人たちの心象風景というか、話だな、と。
ともあれ、人物はさすがに端的に描かれていて、その膨大な情報・文の長さの中に、さほど詳しく綿々と描かれるでもないのに、強力に浮かび上がる人物像の確かさに、いつもうならされる訳なのです。その彼女が描く人物の熱烈なファンであり、そういう方は、きっと多いかと思います。
そういう意味でもしかし今回は、合田にしても野田にしても加納兄妹にしてもさほど…なのですよね。悔恨ばかりでそれぞれ救われるというか、晴れ晴れとする場面がないからかしら…? 合田の人となりなり育った背景などはよくわかったのだけども。心情なり互いの交流する場面がもっと描かれていたら…と思う反面、この文庫本の話はよく研ぎ澄まされすっきりとしていて、文句の付けようがないなと感じます。
単行本から文庫本へは、大幅な改稿をすることで有名な方ですから、私文庫本読んで、改めて単行本をパラパラ読み返してみました。そして、いい、納得のいく削がれかたをしていると感心せざるをなかったです。より整然とされていて、話がわかりやすく、タイトに引き締まった分、クリアーに浮かんでくるモノはありますし。特に森の立場は蛇足が取れていて良かったですね!
しかししかし、氏の一種駄文というか「?」となる、ツッコミいれたくなる表現が全くないことには、一抹の寂しさも感じつつ、その分単行本読んで安心したり…とそんなジレンマも楽しいといえば、楽しいのでした。
冒頭のエピグラフ/ダンテ『神曲』である
「人生の道半ばにして/正道を踏み外したわたくしは/目が覚めると暗い森の中にいた」
という通り、そうそう、道を踏み外した人たちの物語であるからして、カタルシスなんかないんですけど、最後の、義兄加納からの合田の雄一郎への手紙「暗い森に迷い込んでいるらしいが」云々が、慰めと言えば、なぜか慰めでした。
さて、次はとうとう「レディ・ジョーカー」がくるのでしょう〜? とても暗い話だと(書かれた当年を象徴するような)うかがってますが、文庫本化までには、あと何年待たねばならないのでしょうか。そう思うと、実は持ってる単行本を読もう!とは思うのですが。思うのですが、この「照柿」からの疲労感をいやして、しばらく間を置きたい気持ちと、いっそ勢いで、読んでしまった方がいいのか迷うのです。新連載も始まっていると聞いてますし。
しかし、手に重い単行本を読むのが面倒だ、えい、どうしたらいいものか、全ては私の勝手な話なのです、はい。
- 総評というか、正直なとこの感想
おもしろかったけど、疲れました。合田氏離れが自分の中で起こっているからか? 私の頭がアホ化しているからか? 「レディジョーカー」読み切れるのか、心配です…。
あ、ちなみに私は「リヴィエラを撃て」が一番きっとずっと大、大、大好きですね!!!次点で「黄金を抱いて跳べ」。