のりこうのくうねるあそぶー

生誕120年富本憲吉展

 京都国立近代美術館にて


  • 初めに 

 JRのチラシを前々から見て、観に行っておきたいな、と思ってました。
 近代陶芸の巨匠として第一回目に人間国宝に認定された方の作品展…。はっきり言って、陶芸一般、全然詳しくもなく、理解も出来ていません。お名前も存じませんでした、orz。
ただ料理家の先生の家で、同様な物が使われていたり、陶磁器の修復にたまたま少々携わったりの縁で、なんとなく興味を持っているだけのものです。
 それに日本人として、自国の美術工芸品の知識を少しは知っておかないと…、(年相応くらいのは)です。知れば知るほど、日本の工芸品の品質の高さ美しさに感銘してしまいます。

  • 富本憲吉氏について

 チラシ・図録から簡単に抜粋すると〜、


 1886(明治19)年奈良県安堵村に旧家の長男として生まれる。裕福で、高い教養ある親族に囲まれ、幼少の頃から芸術に造詣の深い環境で育った模様。
 1904年東京美術学校図案科に入学。同年生まれの藤田嗣治らと共にマンドリン同好会に入っており、西洋音楽には傾倒していたとうかがえる。
 建築・室内装飾を専攻し、1908年英国私費留学ウィリアム・モリスやホイッスラーの工芸思想を具現化した仕事にも触れ、ロンドンの美術工芸学校でステンドグラス制作を学びながら、ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館に通い、所蔵品のスケッチを行う。また、日本で開催する博覧会の調査に来ていた文部省技官の助手として、パリからカイロ、インドへの旅行にも同行している。
 帰国後、バーナード・リーチとの出会いで、作陶の道に踏み込んでいく。
 1913年奈良の生家の裏庭に楽焼きの窯を置き、独学で研究を重ねながら、白磁の時代を築く(「大和時代」〜1926年)。
 子供たちの教育のために、東京に移住(「東京時代」1926-1946年)。新居と本窯を築き、作陶に励む。1936年には九谷の北出塔次朗の窯で研究と制作を行い、美しい色彩の色絵磁器を造り出していく。
 戦後は京都に移り、晩年の色絵・金銀彩の世界を、展していく(「京都時代」1946-1963年)。
 1955年第1回重要無形文化財人間国宝)に認定
 1961年文化勲章受章
 

 1963年に他界するまで、「模様から模様を造らず」という信念のもとに、独自の形と模様をひたすらに追求し、用と美の結合という工芸のあり方を求めて格闘。その他に追従を許さないオリジナルな作品の芸術性は高く評価され、富本芸術は不動のものとなった。


  • 生誕120年富本憲吉展 

 生誕120年を記念し、多彩な資料など約200点で、富本憲吉の全容に迫る展覧会。
東京美術学校から留学、帰国1908-1912
大和時代1913-1926
東京時代1926-1946
京都時代1946-1963
書、画巻、デザインの仕事
関係者との交流
 という項目に分かれて、展示してありました。
 作品は当然、年代順に展示されるのが普通ですが、その通りで(笑)良かったです。時代と共に変わりながら熟練され巧緻で研ぎ澄まされていく作品に、どんどん見入ってしまいました。(変わらなさ〜も発見できたり)
 そうそう、項目毎の説明文や、写真にも見入りました! ずいぶん濃ゆい顔をされた方だなぁ…と!(…失礼!)


  • 作品について

 東京時代までは若くもあり作品数も少ないです。
 本領が発揮されていくのは、やはり東京時代からでしょう。素地土が凍って仕事の出来ない冬期に、信楽、波佐見、益子、瀬戸、清水など各産地の伝統技法を研究されたそうですが、なんといっても九谷でしょう〜、彼は。古九谷の色絵技法の研究に集中。
 鮮やかな緑、黄色、青の色つかいに赤。その表現方法を採りながらも、自己の生活や自然の草花の写生から考案した模様が展開されていきます。


 連続する四弁花模様の完成が、東京時代の作品に見られます。壺に描かれたその模様の無限性に、うんうん感じ入りってしまいましたし、また…模様飾筥という箱らの華飾さには、しげしげ眺め入ってしまいました!
 京都時代の羊歯模様圧巻されでした。それが色絵金銀彩で描かれて、並々ならぬ品格で迫ってきます。四弁花模様もますます洗練されていき、文字模様も展開されていきます。
 小さいものから大きなもの、どの作品の隅々にわたっても彼の息吹が感じられ、ただただ感銘しながら見ていきました。
 実用にあたっては、恐れ多いような芸術品ばかりでしたが〜、小皿とかコーヒーカップとか箸置きなら使えるかも…などと恐れ多くも思ってもおりました(汗)。
 

 展示最後の、デザインの仕事や関係者たちの作品も時代が感じられて良かったです。デザイン画や手書き絵はがきなど、可愛らしくちょっと漫画チックな感じもして、心軽やかに見れる感じでした。



  • 付録・ギャラリー常設展

 上階にギャラリーの常設展というか、おそらく所持していると思われるいろんな作品の展示会展があり、料金に含まれているのでついでに見てきました。
 それはもう、ピカソマチスから、ユージンスミスの戦争写真から、現代芸術から鏑木清方から富本の陶器からいろいろ雑多にあって!(きっと考えて展示しているのでしょうけれど!)、得したような疲れたような…で〜、どどどっと、盛りだくさんな鑑賞にくたくたになりつつ
 大きい窓の外には、夕闇迫る京都の北山に、朱色鮮やかな大鳥居が目の前に立っていて、はっと、というか、ほっと、というか、まあ京都らしくて、美しいなぁ〜と感じながら、そんな外を眺めながら、階段で1階まで降りていったのでした…。