のりこうのくうねるあそぶー

小旅行気分で、西六甲

六甲山
 東西に全長56㎞。平均12-5時間で六甲全山縦走をする大会もある。一度出たことがあって、早朝日の開ける前から、日没過ぎてまで一日中歩く。二度、星空を眺められるのが良いな、と思った。
 この大会の参加人数は数百人だったと思う。西の須磨浦公園が始点で、東は宝塚が終点。途中棄権もありで、人も徐々に減っては来るけど、始点近い西の方は渋滞して大変なのだ。そんな思い出の西六甲。メインは須磨アルプスと呼ばれる横尾山。そこに行きたかったのだ。
板宿〜横尾山
 山陽電鉄板宿駅から商店街を抜け、住宅街の小道を抜け、八幡神社に登る。見下ろす町が間近で、山陽電車が本当に山際を走っているのが分かる。もっとも住宅街があるからなのだろうけど。
 山中を少し行けば農園があったり、休憩所には椅子が置かれたり、よく手入れの行き届いた道が続き、全く市民の山だと思う。ビールの空き缶で作られた灰皿が置いてあったりもする。植生は雑多で、すっきりした宝塚よりの東六甲とは趣も違う。市民に愛される山なのはいいけれど、本来山が持つ深遠さがないのが好みでない所だ。行き交う人も多い。みんなまちまちで気軽な格好をしている所もなんだか、楽しいと言えばそうだろうな。
 途中でお昼をいただきながらゆっくり登っていく。望みの須磨アルプスは、六甲が禿げ山だった頃の面影を充分に残した数少ない縦走路だ。風化した花崗岩の露岩地帯で、やせ細った岩尾根。鎖やら階段が立て付けてあるから不安はないが、全くの素人さんならちょっとは、びびるはず。残念だったのは時間がお昼近かったこと。朝か夕陽の当たる頃なら光線の加減でもう少し美しく見えただろうに、と。一部ハゼの木は真っ赤になっていても紅葉もまだ少し早い。
 さて、横尾山を過ぎ梶尾山には展望台があって登ると瀬戸内の海が一望できる。残念ながら霞がちであった。高速道路の音なども上がってきて、ますます無神経にならざるを得ない。そこから高倉台団地を抜ける。本来は高倉山であったが、削られて全くの団地地帯になった。その為山ではない所をゆくのが、この縦走路の矛盾点でもある。削られた土はポートアイランドになった。あれから30年も立つのだから、団地街も落ちついた風景の一部となった。
高座台団地〜鉄拐山・旗振山〜塩谷 
 団地を抜け登り返すと、茶屋がありもう須磨浦公園の一部になるのかな。周辺の樹が育ち展望の少ない鉄拐山を抜け、旗振山。途中に源平合戦で有名な一ノ谷がある。急ではあるが、まあ馬を引いて行けなくもないかな……?
 旗振山はここから大阪は船場へ、米相場を旗を振って合図したという山。芭蕉の句「蝸牛角振わけよ須磨明石」と読まれた須磨(まだ摂津の国)と明石の国を分けた国境でもある。山陽電車の駅から山上近くまでロープウェイが付けられているので、デートや家族連れなども気軽に登ってこられる。紺碧の瀬戸内海が美しいところだ。
 山上には遊園地があり、その閑散とした加減に味わいがある。家族連れやデートには「幸せフィルター」をかければ楽しめるはず。私達もバカバカしくも乗り物に乗り、遊んでしまった。実は夫には内緒だが、その昔のずっと若い頃、好きだった人とデートしたこともあり、美化したい記憶の一部である。
 様々付けられた道に惑わされつつ、塩谷に下る。本来の六甲縦走は塩谷からだったらしい。そして、塩谷の駅から明石へ向かったのだった。
松帆の郷
 実はこれこそがメインだった! 淡路島の温泉である。
 明石から高速船に乗り、明石大橋をくぐり淡路島北端の岩屋港へ。船は制服を着た学生もが多く、通学通勤の足だな。13分! 潮風を切って進む高速小船は、快適で愉快、爽快。 
 港からバスで5分。美湯松帆の郷だ。広々とした湯に、明石大橋を眺めながらゆったり浸かる。サウナも広くてテレビ付き。夜景だったらなおさら素晴らしいことだろう。ちなみに船&温泉入浴付きのセット券千円。(船片道500円&入浴700円だから超お得〜!)
 1時間ほどのんびりして元来た道を帰る。すっかり日も暮れて、橋や六甲のライトアップした夜景を眺めながらの船旅は、なおさら、ひとしお、旅情を誘う。松帆の高台すれすれに三日月が登り、その上に星が輝く。
「あれ、火星かな」「けっこう赤いしな」
 今大接近している火星だといいな。それを見たことにしておこう。
 明石のフェリー乗り場の近くには、美味しい有名な伊太飯屋「トラットリア・ピッツェリア・チーロ 」がある。そこに行ければ完璧な旅を楽しめるだろう。しかし、電話で訊いたら「本日は予約でいっぱいなんです」と予想通りの答えだった。残念だが致し方ない。人気の店なので予約しておかないと無理。ちなみにここはピザが本当に美味しい〜v他も薪釜が素晴らしい味を出してくれる。
 仕方がないので適当に夕食をすませて、でも最後は、地元民推奨の明石焼き屋で、旅を締めくくった。


 船で淡路に渡る! 旅情ひとしおな、西六甲の小旅〜でした!
(そのうち写真アップします)